【書籍紹介】雑食動物のジレンマ① – 概要

人参を食べながら、「今日のごはんはこれが最適の選択だっただろうか」と考える子猿 書籍紹介

こんにちは、ごりおです。

出産に向けた妻の里帰りに同行して、3日ほど妻の実家で過ごしてきました。
経験豊富な義母についてもらい、とても安心しています。

産休中の妻がこのブログの管理やデザインを担当してくれるので、私は文章づくりに専念できてます。
私が東京に戻った後は、夫婦でリモート連携しながらお届けしていきたいと思います。

さて、この投稿では、
私が食に関わるテーマを追いかけるきっかけとなった書籍の概要や魅力をお伝えします。

なお、今後ご紹介する書籍とスケジュールはこちらでご紹介しております。

紹介する書籍

書籍名:雑食動物のジレンマ~ある4つの食事の自然史~

著者:マイケル・ポーラン

1か月かけてこの本の内容を取り上げて解説して、読書の皆さんが食への向き合い方を改めて考えるきっかけを提供できればと思います。 本日の投稿はその導入編になります。

本書の概要

本書タイトル「雑食動物のジレンマ」とは、雑食動物である人間が身体や技術を進化させてきたことで、あらゆる動植物を食べられるようになり繁栄できた一方で、環境破壊や健康面などで様々な問題が生じ、何を食べて生きてゆけばよいか悩むようになる状況を示しています。

その一例として、本書の序章「摂食障害に病むアメリカ」では、執筆当時のアメリカでマスコミの情報により食生活が乱暴に様変わりし、肥満問題における悪者が脂肪から炭水化物に取って変わられ、主食のパンが食卓から消えるといった、混乱と不安に陥った状態が描かれています。

ごりお
ごりお

移民国家であるアメリカでは確固たる食の伝統が存在しないことが、混乱の背景であると考察されています。一方で、食の伝統が根付いている日本ではそこまで極端な事象は発生しないかもしれません。しかし、夕食の献立をどうするか、どこまで時短料理で済ましてよいか、食材は国産か外国産か、オーガニックの食品を選ぶべきか…?といった途方もない数の選択に晒され、食の選択に関してどこかしら不安を感じているのではないでしょうか。

本書は、経済的な効率性が重視され、食に関する大量の情報が行きかう現代社会で、雑食動物のジレンマを抱える人間は何を食べたらよいのか?という問いに答えるために3つの食物連鎖を追跡する構成となっています。

①「トウモロコシ―工業の食物連鎖」 
②「牧草―田園の食物連鎖」 
③「森林―私の食物連鎖」

①はファーストフード
②はオーガニックフード
③は究極のスローフード(狩猟採集)が作り出されるプロセス
に対応しています。

本書の魅力

魅力1: 現代の食物連鎖の問題点を語る表現力が秀逸

本書は、現代の主流の食物連鎖(上記①)の問題点を知り、主流ではない他の食物連鎖(同②や③)との比較により、本質的に必要なことは何か、を考える手掛かりになります。

豊かな食の背後にある目に見えないコスト・犠牲(→ 次回以降に解説していきます)を解き明かす過程で辛い事実に向き合う必要はあります。

無機質に説明されると読むのがしんどくなる内容ですが、著者の心の動きや皮肉、ユーモアまじえた秀逸な表現で、読者が共感し事実に向き合えるよう仕掛けられています。

この肥育場がトウモロコシの上に建てられた都市であるとするなら、
それは実は目に見えない石油の海に浮いている都市なのだ。

出典: 雑食動物のジレンマ~ある4つの食事の自然史~ 上

上記に引用したものは、大量のトウモロコシで工業的に牛を育てる肥育場を、トウモロコシを基盤とした都市と見たて、その基盤であるトウモロコシが石油で作られた肥料を使って育てられたものであるとするなら、それは石油の海に浮く危うい都市であり、持続可能性の低い食システムであるという、皮肉たっぷりの表現です。

この表現が私の頭に残したイメージは読後も強く残っています。
現代にサルバドール・ダリが生きてたら、アート作品にしてくれそうですね。

魅力2: 雑食動物のジレンマに向き合わせてくれる。

雑食動物のジレンマに向き合うことは、知りたくない事実を知ったり、多くの選択を意識的に行うことでもあるので、負荷がかかることです。

しかし、これらは雑食性を高めた人類の宿命だと思うようになりました。

というのは、これまでも人類は身体や技術を進化させ、文化、社会を高度化してきたことで、ジレンマを解決してきたように見えましたが、食の問題の本質は変わらず、時代を超えて形を変えて我々の前に立ちはだかっていると気づかされるからです。

先人たちも向き合ってきたことであれば、自分たちも向き合ってみようという気になりませんか?
また、人類の歴史の営みから多くのことを学べるのではないでしょうか?
そういった観点で、次回以降の本書の解説を読んで頂ければ幸いです。

最後に、食のテーマを追いかける私を勇気づけてくれた著者の表現を紹介します。

ひとつひとつ意識しながら食べ物を口にすることは、重荷に感じるかもしれない。
だが人生でこれほど自分に満足を与えてくれる経験は、実際あまりないのだ。

出典: 雑食動物のジレンマ~ある4つの食事の自然史~ 上

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