こんにちは。1週間前に無事、第一子(長女)が産まれた、ごりおです。
母子とも退院して、妻の実家で子供の夜泣きに奮闘する日々が始まりました。年末年始に、発酵あんこを夜通しお世話する予行練習を行いましたが、泣き喚く実際の子供のお世話をする方が格段に大変ですね。笑 出産前後でしばらくブログ投稿が滞ってしまいましたが、無理ない範囲で再開していきたいと思います。
話は変わりますが、先日、東京で一人暮らし中に映画「ゴールデンカムイ」を見てきました。日露戦争後の北海道を舞台に、元兵士の主人公とアイヌの少女が協力して金塊探しをする話です。アイヌとの食文化の違いや、文化の違いに対するお互いの反応が面白おかしく描かれていす。これから鑑賞される方もいらっしゃるかと思うので詳細は割愛しますが、やはり自分たちの文化で口にしないものを食べる時が文化の違いを最も感じるものだなと感じました。
さて、「ゴールデンカムイ」を見てもわかる通り、人類はその土地で入手可能な動植物を食べながら雑食性を獲得し、食文化やアイデンティティを築いてきました。では、人類が雑食性を獲得するに当たり、具体的にどのような進化を遂げてきたのか、を見ていきたいと思います。進化の大きな流れの中で、現代の我々はどの位置にいるのかを知ることで、現在そして将来の食の在り方を考えていければと思います。
しばらくこのテーマでの投稿を予定しております。前回まで続けていた書籍「雑食動物のジレンマ」(①概要, ②トウモロコシ編, ③農場・肥料編,④肥料場編)の紹介の続きはその後に再開予定です。
今回のポイント
(1)「身体」の進化
我々、ヒトの祖先たちは何を食べてきたのでしょうか?雑食性を獲得する前半では、100万年単位のゆっくりしたペースで身体を進化させてきました(正確には、主に消化器官を食事に適応させてきたと言えます)。その歴史をざっと振り返ってみましょう。
大型霊長類時代:
現存する人間に最も近い生物は、オラウータンやチンパンジーと言われています。彼らは、森の中で果物(糖質源)や若葉(タンパク質源)を摂取しています。我々の祖先も、進化の過程で彼らと分岐する際には、そのような食生活を営んでいたと考えられます。
ヒトへの進化の出発点:
その後、ヒト(ホモ・サピエンス)への進化の出発点である猿人は、果実に加え、種子や塊根を食べるようになりました(400万年前頃)。これは、アフリカ大陸の気候変動により熱帯雨林が後退し、森のはずれ(木がまばらな疎開林)で生活する必要が生じ、以前ほど果物が手に入らなくなったためと言われています。この時に種子や塊根(いわゆる芋)など硬いものを食べるために咀嚼力が強化されました。また、森から離れた場所で生活するようになり、直立二足歩行が発達したと考えられます。これは、「食物供給仮説」と呼ばれ、配偶者や子供のために、森から居住エリアまで果物を手で持って運ぶ必要が生じた為と考えられています。
肉食への準備:
人類の祖先はまず種子や木の実といった脂肪分が豊富な「ナッツ」を食すようになりました。これにより、脂肪分の消化器官である小腸が発達し、代わりに食物繊維を消化する盲腸は退化するといった自然選択が起こりました。結果として、肉を食べることに適した腸を持つ個体が残りました。
ここまでが、身体の進化を伴う100万年単位の食性の変化です。ここからは、「脳の発達」とそれに伴う「技術の進化」で変化のスピードが更に加速していきます。
(2)「技術」の進化
肉食は、死んだ大型動物の腐肉あさりから始まったようですが、やがて道具を開発し狩猟するようになります。更に、原人に進化したところで火を使って肉を調理をすることができるようになります(200万年前)。これにより、腸内での消化吸収性が向上しました。生肉の消化には元来、腸内で膨大なエネルギーを消費する必要がありますが、火を使って肉のたんぱく質を変質させ、消化吸収性を高めることで、短時間で効率的にエネルギー摂取ができるようになるのです。
この変化により、摂取したエネルギーを腸から脳に振り分けることが可能となります。言い換えると、「消化すること」から「考えること」にエネルギーを費やせるようになったのです。こうして人類は思考力を高め、食に関わる様々な「技術」を発達させるようになりました。
食に関わる様々な技術の例
・肉を焼く技術 → 消化吸収性を高め、感染症のリスクを抑える
・穀物(米・麦等)を栽培する技術 → 膨大な量のエネルギーを獲得し、保存・輸送する
・穀物を粉砕・加熱する加工技術(※1) → 消化吸収性を高める、解毒する
・微生物をコントロールする技術 → 発酵で消化吸収性を高める、感染症のリスクを抑える
※1:穀物は本来、植物の種子です。その中には、遺伝情報はもとより植物が成長するためのエネルギーや栄養素が豊富に含まれています。それらを守るために、そのままでは消化吸収性が低いため、料理をする必要があるのです。
(3) 我々の現在地
このように我々の祖先は、ヒトへと進化する過程の前半では、長い時間をかけて消化器官を変化させて食べられるものを増やしてきました。そしてある時点からは、脳を発達させ、技術を獲得することで、大量のエネルギーを含む穀物を獲得し、そのエネルギーの吸収効率を高め、解毒し、感染症リスクを抑えながら、比較的短期間で多くの食材を食べられるようになったと考えられています。
「調理」という行為は、身体が本来持つ消化・防御機能を身体外に取り出した(アウトソースした)とも言えます。更に、各家庭で行われていた調理行為の分業化が進み、最終的には食品加工業が多くを担うようになり、効率化や技術革新が急速に進んでいるのが現代の姿です。
(4)将来の食の展望
世界人口が今後ますます増加して食資源の枯渇が危ぶまれる中、人類が生存し続けていくためには、新しい技術を受け入れていく必要があるのかもしれませんね。
例えば、前回の投稿(【書籍紹介】雑食動物のジレンマ④ – 肥育場編)では、人類の食欲に応じて肉を供給するために工業的な畜産が進められ、そこでは多くの犠牲やコストが支払われていることを見てきました。そこで、「肉を生み出すのにそもそも、牛という、感情をもつ生物体を使う必要があるのか?(※2)」、「細胞培養技術を活用することで、大量の動物たちの犠牲、環境負荷のないプロセスで皆の食欲を満たせるのでは」と考え、日夜、技術開発に励んでいる研究者たちがいます。
これまで見てきたような、「技術を進化させて雑食性を高めてきた人類史」の文脈に置いてみると、たとえ現時点では大半の人々にとって信じられないことであっても、こうした新技術が今後の人類の食を形作っていくのかもしれませんね。
※2:英国の首相であったウィンストン・チャーチルは人類の未来をかなり先鋭的に捉えていた人物で、1931年に「Fifty Years Hence(50年後)」と題し、1980年代に世界がどうなっているかを予測する記事を執筆しました。その中で、「畜産以外の方法で食肉の生産する手段を見つけるだろう」と予測しました。「鶏胸や手羽を食べるために鳥一羽を丸ごと育てるという不合理からは脱出するだろう」、「これらの部位をそれぞれ適切な培地で育てることによって」、「そうすることで家畜用の農作物を育てるのに使われていた土地が空き、公園や庭園が牧草地や畑に取って代わる」と結論づけたそうです。引用元 https://toyokeizai.net/articles/-/21101
寸劇
今回の投稿の要点をクスっと笑える寸劇でお送りします。
登場人物
ふぁんこ
世界中を旅した後、ごりおとつまこの家に居候することになった大食いの猫。猫であるにも関わらず、雑食性に目覚めてしまう。
ごり爺
ふぁんこの近所に住まう知識人ゴリラ。
本日、ふぁんこはお家に友人(?)を招待しています。
お友達は今日も何やら語りたい気分のようです。
xxx年後の世界では、”味覚や消化器官のアウトソース”によって、不器用なふぁんこもお友達にお料理を振舞えるようになるのでした(?)。続く。
人類は長い歴史の中で消化器官を発達させ、消化機能のアウトソース(調理加工)を進めることで様々なものを食べられるようになり、世界中で爆発的に人口を増加させてきました。
その延長線上であるXXX年後の世界では、消化機能(&消化機能と連動する味覚機能)のアウトソースが更に進むことで、人類が食べられるものの幅が更に広がる世界がやってくるのかもしれませんね。(寸劇中でふぁん子が投入したようなものであって欲しくはないですが。。笑)
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