こんにちは、ごりおです。
里帰り出産する妻を実家へ送り届け、私は自分の実家(@京都)でしばらく過ごしていました。
家族や親戚と会い、ブログ始めた話をきっかけに食談義を楽しんだりしています。
食のエピソードはその人の価値観やひととなりが表れて面白いですね。
今後は食卓の話題になるような気軽なネタも挟んでいければと思います。
前回のサマリ・今後の構成
前回の投稿では、「雑食動物のジレンマ」の概要について説明をしました。
前回投稿のサマリ
ヒトが雑食性を高めてきたことで能力や環境適応力を高め、地球上で繁栄することができるようになった一方で、自然環境との関わりや健康面などで様々な問題が生じ、「何を食べていくべきか悩む」といったジレンマが生じた。本書では「何を食べるか」というシンプルな問いに答えるために、3つの異なる食物連鎖を追跡する。
①「トウモロコシ―工業の食物連鎖」
②「牧草―田園の食物連鎖」
③「森林―私の食物連鎖」
★前回の投稿はこちら
上記の①のテーマ(「トウモロコシ―工業の食物連鎖」)を一言でまとめると、現代の食物連鎖がトウモロコシ中心となり全体が見えづらくなっていること、特定作物や化石燃料に依存したものであることへの問題提起です。
この①のテーマについて、今回を含めて3回に渡って見ていきたいと思います。
著者のユーモアたっぷりの表現も紹介していきますね。
今回のポイント
1. あらゆる食の源となるトウモロコシ
まず、現代の食品は食物連鎖の元をたどると、その多くがトウモロコシであることが示されています。トウモロコシは世界中で家畜や養殖魚の飼料として用いられています。もちろん肉だけでなく、卵や牛乳、乳製品もその元を辿るとトウモロコシです。
また、加工食品の世界でも、トウモロコシが複雑に形を変えて登場します。例えばチキンナゲットでの場合、トウモロコシを食べる鶏の肉が原材料であり、コーンスターチをつなぎとして使用し、コーンフラワーの衣をコーン油で揚げて作られます。その他の加工剤もトウモロコシから作ることが可能です。清涼飲料に関しても、トウモロコシのデンプンを原料とした液状糖が使用されます。
チキンナゲットを飲み下そうと何か清涼飲料に手を伸ばせば、
引用 「雑食動物のジレンマ(上)」
トウモロコシを食べながらトウモロコシを飲むことになる。
このように、あらゆる食品がトウモロコシからできていることが分かります。
ではそれらを食べるヒトの体はどうでしょうか?
2. “歩くトウモロコシ加工品”
メキシコに住むマヤ民族は、いまだに自分たちをトウモロコシの民族と呼ぶことがあるようです。
約9000年もの間、この植物が食生活の中心となってきたことを認めた表現です。
メキシコ料理と言えばタコスですが、これはトウモロコシ粉でつくるトルティーヤという薄焼きパンに肉や野菜を挟んだものです。それ以外にも、トルティーヤを油で揚げたり煮込んだりする食べ方も一般的です。それだけトウモロコシはメキシコの食文化に欠かせません。
実は冒頭の写真は、学生時代にメキシコを旅したときのものです。トウモロコシの一粒一粒を人の顔で表現したアートから、彼らがトウモロコシを生命の源だと捉えているのがよく伝わりました。
このように伝統的にトウモロコシに食生活の多くを委ねていた伝統的なメキシコ人ですが、筆者は彼らとアメリカ人の体の組織や毛髪の同位体を比較した研究結果を取り上げ、今ではアメリカ人こそが真のトウモロコシ民族なのでは、と述べています。実際、伝統的なメキシコ人はアメリカ人と比べて、はるかに多様な植物による食物連鎖の影響下にいたようです。上述したように現代のアメリカ人の食事があらゆる面でトウモロコシに大きく依存している一方で、伝統的なメキシコ人が食べる動物はトウモロコシではなく牧草を食んで育ち、タンパク質の多くを豆から摂取し、飲み物の甘味料にはトウモロコシ由来の液状糖ではなくショ糖を使っていました。
(今やメキシコの食生活もグローバル化の影響でトウモロコシ依存は高まっているでしょうが。。旅行中も伝統飲料よりコーラをよく目にしました。)
トウモロコシ
くん
歩くトウモロコシ加工品。それがアメリカ人なのだ。
引用 「雑食動物のジレンマ(上)」
では、アメリカ人は自分達の食のライフスタイルをどのように認識しているでしょうか?
その昔ヨーロッパからアメリカに入植した人々は、先住民をトウモロコシ民族、自分たちを小麦民族だと考えていました。ヨーロッパでは、小麦は最も洗練された、文明的な穀物だとみなされていたようです。現代のアメリカ人に「どちらがより自分達の食のライフスタイルをより適切に表現しているか」と問えば、おそらく大半が自分は小麦民族だと答えるでしょうし、植物で括る必要がなければ、ビーフ民族もしくはチキン民族の方がしっくりくると言うかもしれません。
アメリカ人は、食物連鎖の元を辿るとアメリカ大陸の先住民族以上にトウモロコシに依存しているにも関わらず、その認識が薄いところにおかしさがありますね。
本ではアメリカの状況を例に説明されているけれど、日本や世界の他の国ではどうなの?
食材の豊かな日本では特定の作物に大きく依存していることはないだろうけれど、トウモロコシ輸入量は世界3位で(2021年時点※1)、畜産品や加工食品が豊富であることを考えると無関係な話とは言えないだろうね。
経済成長で豊かになった国では畜産品や加工食品の消費量が増えるので、世界的にトウモロコシ依存が高くなる傾向があるみたいだね。※2
今回のまとめ
今回は、現代の食物連鎖においてトウモロコシの影響が大きくなっていることを見てきました。トウモロコシそのものは否定されるべきでないですが、特定作物への依存度が大きいことや、その一方で食システムの実態が消費者の目には分かりにくくなっていることには問題がありそうですね。
次回は、トウモロコシ農場が舞台になります。
分かりにくい食システムの実態を覗いてみたいと思います。
※1: 世界のとうもろこし 生産量、消費量、輸出量、輸入量の推移(「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
※2:三井物産戦略研究所レポート(2017)
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